前提として、私がここで用いる「北朝鮮について調べている人々」という言葉は、以下で説明するように、科学的以外の例えば政治的その他主義主張とは、異なる価値基準から調べごとを行っている人々のことを指します。ご承知おき下さい。
目次
はじめに ー設立前夜潭-
2025年2月、当時労働新聞のホームページで公開されていた朝鮮語記事のデータベース公開と共に、intchosonのWEBページは始まりました。元々私は朝鮮民主主義人民共和国(以下、北朝鮮)の地理や歴史に興味をもって調べごとをしていたので、調べる際の利便性を確保するためのツールとして労働新聞の記事を検索できるようにしようと思い立ちました。
同時に、このことを思いついた2024年というのは、北朝鮮について調べる人々にとって衝撃と困惑、意気消沈の一年でした。
2月には対南政策の転換が発表されると同時に、膨大な量の写真と動画、記事を公開していたほぼすべての対外向けサイトが予告なく一斉に閉鎖。それ以前に公開されていた多くのコンテンツが公式のWEBサイトからは閲覧不可能に。
6月末から7月の頭にかけては、朝露関係の変化に応じてか、中国所有のChinaSat12から送信されていた衛星放送の朝鮮中央テレビが突然停波し、代わりにロシア所有Express103からの送信が開始。これにより朝鮮中央テレビの受信難易度が大幅に上昇。
さらに12月には、個人で朝鮮中央テレビやWEBサイト上の映像をアップロードしていたYoutubeチャンネルの多くが、Youtubeのポリシーに違反しているとして停止。過去の映像がインターネット上からほとんどなくなってしまいました。
このように北朝鮮自身と、それを取り巻く環境、それぞれの変化によって、多くの情報リソースが失われ、また、新しい情報を誰もが手軽に入手できるような環境すらなくなってしまいました。
北朝鮮が公式に発信している情報は、それがたとえ見せたい部分のみを見せるものであったとしても、非常に重要な情報源です。一般民衆からの情報発信がない中、(それそのものが厳然たる事実として現れる)公式の情報を端から端まで、隅から隅まで、言葉や編集で飾れない部分を読み解くことが、より細かな「評価」を行う助けになります。
私は、志を同じくし、北朝鮮について調べている人々の力を合わせ、これら情報を永続的に収集・保存・公開する仕組みを持たなければならないと考えました。
活動内容と「評価」による分析の手法
intchosonが行う活動の内容は、主に2つあります。 1つ目はその開設動機からもわかるように、記事、画像、映像等、北朝鮮が公式に発信するあらゆる情報の収集、保存、公開。 2つ目は、それらの情報、またそれに対していくらか分析を加えた結果を公開、発表することです。
この分析という試みにおいて、唯一依拠するものが、「評価」という行いであると私たちは考えています。
これは私N.Sが独自的に考え出した概念ではありますが、私にとってそれは、現代の科学的な視点から現実を見るとき、すべての根幹となる考え方なのではないかと思われます。
「評価」とはすなわち、現実のあらゆる事象に整合性を持つように、そのものの立ち位置を考えることであり、その整合性の高さを「確からしさ」と定義します。
とはいえ実際のところ、個々人あるいは人々が認識できるあらゆる事象、というのは、初めは限られた範囲のものでしかなく、しばしば増えていくものです。ですから現実的には狭い範囲で我々が認知するものとしての「確からしさ」は変動しますし、それに応じて「評価」は変化していかなければならないものです。
我々が目指すのは、その時点で最も「確からしい」、「評価」を与えようと努力することであり、そうして行われた分析すら、個々人の狭い範囲に限定された「確からしさ」のもとに、人々の「評価」の対象になると考えています。
そこで必要になってくるのが、世に発信した分析の説明性であり、特に私は、そこで大きな役割を担うのが、情報源(ソース)の情報であると考えています。
少なくとも、ある情報源(ソース)が、その情報を社会に向けて発信したということは揺るがない事実と捉える事ができ、メタ的な視点をそこに置くことで、情報の「確からしさ」に必然的、恒常的な留保を担保することができます。
ゆえに、最低限の事実としてここがこういうことを発信した、ここはこう発信したということに対して、それらを突き合わせるとこういったことが考えられるが、おそらくこれが最も「確からしい」、という不安定な「評価」を、段階的に分離したものとしてとらえることが可能になります。
そういった冷酷なまでの現実主義のみを、我々が北朝鮮に向けるまなざしとしたとき、あらゆる政治的主義主張は棄却されるはずであり、現にそうなっていなければならないということを、我々は心に刻んでいるつもりです。
その意味で、本intchosonはどのような政治的主義主張にも与せず、ただ現れたソースたちを基にした分析を、至上の命題とする団体であるということをご理解いただきたく存じます。
研究の必要性と三つのintについて
では、そもそもなぜ分析をするのか、ということについて、何事についてもより「確からしい」ものが突き詰められている状態こそが健全な社会であろうことは自明の理ではないかと思いますが、こと北朝鮮については、年々そのような、より「確からしい」情報が求められるようになってきているのではないかということを説明します。
第二次世界大戦後に建国されて以来、長らく北朝鮮は日本にとって内情がよくわからない国として存在してきたように思います。拉致事件の追及や日朝首脳会談の開催を経てなお、誰もがという点では、人々はその時々の北朝鮮の実態について知る術を持たなかったといえるでしょう。
しかし現代ではインターネットの発達や衛星画像サービス等公共的リソースの拡充により、主にOSINTという領域で分析の基盤となる、公開情報の範囲が広がると共に、誰もがそれらの情報を手に入れられるようになりました。
そうして興味さえ持っていれば、より多くの情報をもとに、全く一般の人々であっても手ずから高度な分析を行うことができるようになりました。言うまでもありませんが、そこでより多くの人々が力を合わせるためには、もちろん本サイトの存在のように、それを行うための仕組みが備わっている必要があります。
他方で、安っぽい情報の流通も拡大したといえるでしょう。アテンションエコノミーと呼ばれていますが、情報の流通環境が利益第一主義的になってしまうと注目性のみが追求され、またポストトゥルースといって、依拠するものがわからず感情論から情報を認識する人々が現れたことで、「確からしさ」を追い求めることが蔑ろにされ、ソースを示さず、説明性さえ放棄した情報の発信で溢れかえるようになってしまいました。これは北朝鮮が関連することに限らず、現代のすべての情報に対して言えることです。
そのような中で北朝鮮は、現実的な問題として、その国家的なプレゼンスを高め続けており、同じ東アジア圏のなか、隣接する日本は継続してこれに対応していく必要に迫られています。
ここで、対応を行う主体が、政府のみならず、国民一人一人からなる日本という国家であることに留意が必要でしょう。そのための判断には、常により深く、より緻密な、「評価」された情報としての分析が必要であり、かつそれが人々の間に共有されていなければなりません。
北朝鮮のみならず、中国やロシアも同様にその存在感を高めている中、一般の人々の間でも安全保障を筆頭とした意識が高まりつつあるように思うのですが、先のような情報環境に鑑みると、社会的な意味合いでの北朝鮮に対する知見というのは、他の2国に比べても希薄であると言わざるを得ないでしょう。
そういった意味で、政治家や学者に限らない一般の人々にも求められているのが、生の情報のみならず分析をして共有するインテリジェンス(intelligence)と、それを行うシンクタンクであり、かつその手法においては、今まで考えられなかったものとして、興味(interest)に導かれた一般の人々による分析が活用できる、という点に存在意義を見出したのがintchosonというわけです。
加えて一般の人々である我々の分析が、その妥当性を示す論理に裏打ちされ、道を外れぬように、感情論などではない「確からしさ」という現実的な指標を用いることを、OSINT的手法に有効な手段であるプログラミングにおいて整数を格納した変数を定義するint型(integer)に象徴させ、3つのintという特徴を表しました。
我々はこのような特徴に基づき、あくまで一般の人々として一般の人々のために、北朝鮮を「評価」することを理念として掲げる情報の集積場所であることを目指します。
資金の調達と寄付のお願い、その用途について
活動のための資金について、本ページを公開する2025年10月9日時点までに支出されたものは、全てが運営メンバー個々人の貯蓄から出されたものとなっています。
朝鮮中央テレビ受信のためのアンテナやチューナーは私N.Sが、公開するしないにせよ映像を集めて分析したいからという理屈で個人的に用意したもので、ホームページのサーバーもキャンペーン中に申し込んだため当分の間は格安で提供されており、労働新聞や中央通信は無料でホームページに公開されていたもの、辞書はインターネット上で有志が公開している辞書アプリのデータ、またメンバーが古書店から入手した紙の辞書をもとに作成しているものです。
ホームページのシステム・デザインに関しても、高い技術力を持つメンバーの尽力により、外部に発注することなく創造されたものとなっています。
これまでは外部から調達した資金を用いずにコンテンツを整えてきたものの、今後長きにわたって活動を行っていく上では、継続的に、かつ多様化する出費を賄わなければなりません。そこで我々は、閲覧している皆様からの寄付を集めさせていただきたいと考えています。
寄付の方法については別途寄付の方法についてのページをご覧ください。
集まった寄付については、継続的なホームページの公開に必要なレンタルサーバー費用や自前サーバー、ハードディスク等の機器更新費用、中央テレビの中継に必要な光回線費用や電気代、また資料(主に書籍)の購入費用などに充てさせていただきたく存じます。
皆様のご支援をお待ちしております。なにとぞよろしくお願いいたします。
N.S